サイバー犯罪は近年、急速に規模を拡大しているといわれています。
その総額は2013年時点では50兆円を超えるとも推定され、世界規模の企業売上に匹敵し、アメリカの国防予算にも迫る規模といえます。
組織犯罪の事例
アメリカでは、2002年に「Shadow Crew」と呼ばれるサイバー犯罪者向けの闇Webサイトが立ち上げられ、違法窃取されたクレジット番号、ID、パスワードなどの情報がWebサイトで公開、有料で売買される事件が発生しました。
このサイトは、サイトの運営を行なっていた主要メンバーの逮捕によって、閉鎖されますが、これ以降も同様のサイトが立ち上げられ続けています。
クレジット情報を窃取するグループと、これを利用して実際に金品を窃取するグループの分業が行なわれるようになった典型例といえます。
クレジット情報の窃取はアメリカだけでなく、ロシアなどの東欧圏からも行なわれていました。
最近のサイバー犯罪は、サイバー犯罪に対する法制度が整っていない発展途上国を拠点とするケースが多発しています。
高度化するサイバー組織犯罪
サイバー犯罪は組織化の一途をたどっています。
経済的な利益の獲得をめざした一種のエコシステムが形成されており、分業化、階層化が行なわれているといわれています。
一般的な市場経済でも、市場規模が拡大すれば、市場の効率性を高める意味で自然に分業性が拡大していきます。
自らの得意分野に経営資源を集中し、生産性を高めることで、収益性を高められるのです。
市場主義経済社会ではさまざまな分野でこのような発展が見られ、これと同様の現象がサイバー組織犯罪の市場でも行なわれているのです。
サイバー組織犯罪の市場では、金銭の窃取が主な目的となりますが、それ以外にも脅迫や嫌がらせ、単なる好奇心に基づいて行なわれることもあるでしょう。
ブローカーやベンダーによって、攻撃ツールはより高度で利便性が高く、専門知識をもたない人々でも簡単にサイバー攻撃が行なえる環境が整っています。
こうしてますますサイバー犯罪が拡大し、市場も拡大するという構造が出来上がってきているのです。
サイバー組織犯罪者を繋ぐダークネット
サイバー犯罪を組織化するには、犯罪者同士を結ぶネットワークが必要になります。
インターネット上には、非合法なコンテンツや情報を扱うWebサイトを結ぶためのダークネット/ダークWebと呼ばれるネットワークがあります。
ダークネット上のWebサーバーは、インターネット上での秘匿通信を行なう技術を使い、ピアツーピアに接続されており、通常のインターネットユーザーからは簡単にはアクセスできないネットワーク構造がとられています。
あらゆる犯罪の温床になっていることから、インターポルをはじめとした各国の警察組織は、このダークネット/ダークWebの解明を試みていますが、解明が進んでいないのが現状のようです。
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