個人番号の利用範囲について 取り扱う場面、バックアップ等について知ろう

事業者が個人番号を取り扱う場面とは

番号法では、個人番号を取り扱う事務として、個人番号利用事務個人番号関係事務が定められています(番号法2)。

個人番号利用事務は行政事務なので、行政機関から事務の委託を受けた場合等を除き、民間の事業者が個人番号を取り扱うのは、主に個人番号関係事務を行う場面となります。

 

個人番号関係事務とは

個人番号関係事務とは、個人番号利用事務(行政事務)の処理に必要な、個人番号を記載した書面の行政機関への提出その他の個人番号を利用した事務をいいます(番号法2⑪、9③)。

具体的には、事業者が法令に基づき、源泉徴収票支払調書(税分野)、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(社会保障分野)等の書類に個人番号を記載して行政機関や健康保険組合等に提出するといった、各種帳票の作成、提出等の事務です。

例えば、事業者が講師に対して講演料を支払った場合に、講師の個人番号を報酬の支払調書に記載して提出することは、個人番号関係事務にあたります。

事業者が個人番号を記載することが予定されている主な書類は以下の通りです。

社会保障分野

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得・喪失届
  • 報酬月額算定基礎届/報酬月額変更届
  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 健康保険・厚生年金保険産前産後休業/育児休業等取得者申出害・終了届
  • 国民年金第3号被保険者関係届

健康保険、雇用保険、年金などの手続きの場面で提出を要する書面に、従業員等のマイナンバー(又は法人番号)を記載。

 

税分野

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 給与支払報告書
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 特別徴収票
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書

税務署等に提出する法定調書等に、従業員や株主等のマイナンバー(又は法人番号)を記載。

 

 

個人番号の利用範囲

事業者は、主に個人番号関係義務において個人番号を取り扱います

しかしその利用にあたり、利用目的を特定する必要があります(個人情報保護法15①、番号法32)。

 

利用目的の特定の方法として、「源泉徴収票作成事務」、「健康保険・厚生年金保険届出事務」等のように、従業員等が、自らの個人番号がどのような目的で利用されるのか一般的かつ合理的に予想できる程度に具体的に特定する必要があります。

事業者が従業員の管理のために、個人番号を「社員番号としての利用」というように利用目的を特定したとしても、番号法で定められた事務の範囲内での利用とは言えないため、認められません。

 

 

利用目的以外での個人番号の利用

本人の同意があったとしても、事業者が特定した利用目的以外に個人番号を使用することは出来ません。

個人情報保護法第16条第1項では、本人の同意がある場合に個人情報の目的外利用が認められています。

しかし個人番号については、下記の2件以外での目的外利用は認められていません(番号法9④、29③、32)。

 

① 激甚災害が発生したとき等に金融機関が金銭の支払をするために個人番号を利用する場合

② 人の生命、身体又は財産の保護のために個人番号を利用する必要があり、本人の同意があるか、又は本人の同意を得ることが困難な場合

 

 

利用目的の通知義務

個人情報保護法の個人情報取扱事業者が個人番号を取得した場合、個人番号は個人情報の一つであるため、個人情報保護法 第18条第1項に基づいて利用目的を本人に通知するか、あるいは公表することが必要になります。

あらかじめ公表しておく方法でもかまいません。

通知をする場合、社内LANにおける通知、利用目的を記載した書類の提示、就業規則への明記等の方法が考えられます(具体的には実践編Q110~112参照)。

取得のたびに通知をすることは負担が重くなるため、近年はウェブサイトにプライバシーポリシーの一つとして利用目的をあらかじめ公表している企業も多くなっています。

従業員の扶養親族の個人番号のように、本人以外から個人情報を取得した場合であっても、本人への通知又は公表が必要です。

個人情報取扱事業者にあたらない事業者については、通知又は公表をする法令上の義務はありません。任意に通知又は公表をすることは問題ありません。

 

 

利用目的の変更

事業者が個人番号を取得した後に、利用目的を超えて個人番号を利用する必要が生じた場合、当初の利用目的と相当の関連性がある範囲内で利用目的を変更することができます(個人情報保護法15②)。

ただし、変更した利用目的について、本人に通知するか、あるいは公表することが必要です(個人情報保護法18③)。

利用目的を後から追加することは手間となるため、あらかじめ必要になると想定される複数の個人番号関係事務を利用目的として特定しておくことが望ましいでしょう。

個人番号を取得した当初の利用目的を変更して個人番号を利用することが認められる具体例

雇用契約に基づく給与所得の源泉徴収票作成事務に利用することを当初の目的としていた場合に、これに加えて、雇用契約に基づく健康保険・厚生年金保険届出事務等に利用する目的を追加して利用する。

 

 

バックアップファイルの作成は可能か

特定個人情報ファイルが番号法で許容される範囲内で使用されている場合は、障害に備えてバックアップファイルを作成することも認められると考えられます。

なお、バックアップファイルについては、安全管理措置を講ずる必要があります。

 

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