誰に個人番号の提供を依頼するか
事業者が個人番号の提供を求めることができるのは、番号法及び関連法に規定された事務を行う場合と限定されています。
提供を求めることができる者
- 雇用する従業員(正社員契約社員、パートタイム労働者、アルバイト)
- 役員
- 役員・従業員の扶養家族
- 取引先等
就業規則による個人番号の提供請求の可否
事業者は従業員に対して、個人番号の提出を求めることができます。
就業規則に採用時の個人番号の提供について定めることも可能です。
ただし、従業員が個人番号の提供を拒んだことを理由として懲戒処分を課すことは控えた方がよいと考えます。
従業員にとって事業主への個人番号の提供は法的義務とされていません。
内閣官房QAには「事業者は、従業員から個人番号の提供が受けられない場合には、書類の提出先である行政機関の指示に従うことが適切」とされており、個人番号の提供を受けられない場合でも、事業者の事務手続きが滞るとは限らないと考えられるためです。
内定者への個人番号の提供請求の可否
内定者に対しても、正式な内定通知がなされており、入社に関する誓約書を提出した場合などには、確実に雇用されることが予想されるとみなされ、その時点で個人番号の提出を求めることができるとされています。
一般的には、内定者に就業規則を周知させることはないため、内定者には内定通知書によって個人番号の利用目的を通知し、個人番号の提供を求めることになります。
内定から採用までの間に個人番号を利用する場合は多くないと思われるため、採用時に個人番号の提供を求めることで足りうると考えます。
従業員への利用目的の通知方法
従業員に対する個人番号の利用目的の通知等の方法は、従来から行われている個人情報取得の際と同様の方法が考えられます。
- 利用目的を記載した書類(通知書)の提示
- 社内LANにおける通知
- 就業規則への明記等の方法
従来の個人情報の取得の際の公表・通知の方法についてはガイドラインがあります。
【平成24年5月 厚生労働省 雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン:事例集】
【適切に「公表」している例】
(1)会社のホームページのうちアクセスが容易な場所への掲載
(2)従業員に対する回覧板への現従業員に係る雇用管理情報の利用目的の掲載
(3)パンフレット、社内報等の配布
(4)従業員が定期的に見ると想定される事業所内の掲示板への掲示
【適切に「本人に通知」している例】
(1)面談において、口頭で伝達し又はちらし等の文言を渡すこと
(2)当該本人であることを確認できていることを前提として、電話により口頭で知らせること
(3)退職者等で遠隔地に在住する者に対して、文書を郵便等で送付すること、又は電子メール、FAX等のうち本人が常時使用する媒体により送信すること
【「本人に通知」しているとはいえない例】
(1)当該本人であることを確認できていない状況下において、電話により口頭で知らせること
(2)現住所が正確に把握できていない者に対し、文書を郵便等で送付し、無事届いたか否かにつき事後的な確認及び必要な対応を行わないこと
(3)電子メールを常時使用する者でない者に対し、電子メールを送信すること
従業員への通知文書 内容例
個人番号利用目的通知書
平成○年○月○日
従業員各位 株式会社○○
当社は、従業員の皆さまから提供を受けた、従業員本人及びその扶養家族の個人番号を以下の目的で利用いたします。
- 源泉徴収票作成事務
- 扶養控除等(異動)申告書、保険料控除申告言兼給与所得者の配偶者特別控除申告書作成事務
- 退職所得に関する申告害作成事務
- 財産形成住宅貯蓄・財産形成年金貯蓄に関する申告書、届出害及び申込書作成事務
- 個人住民税関連事務
- 健康保険・厚生年金保険届出・申請・請求事務
- 雇用保険・労災保険届出・申請・請求事務
- 雇用保険・労災保険証明書作成事務
- 国民年金第3号被保険者の届出事務
- その他上記①から⑨の事務に関連する事務
就業規則による利用目的の通知 就業規則例
第○ 条個人番号の利用
会社は、社員から提供を受けた個人番号を以下の目的で利用する。
- 源泉徴収票作成事務
- 扶養控除等(異動)申告書保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告耆作成事務
- 退職所得に関する申告書作成事務
- 財産形成住宅貯蓄・財産形成年金貯蓄に関する申告書届出言及び申込書作成事務
- 個人住民税関連事務
- 健康保険・厚生年金保険届出・申請・請求事務
- 雇用保険・労災保険届出・申請・請求事務
- ③雇用保険・労災保険証明書作成事務
- 国民年金第3号被保険者の届出事務
- その他上記①から⑨の事務に関連する事務
まとめ
個人番号の取扱いにおいて、事業者は①取得、②利用・提供、③保管・廃棄、④安全管理措置、の4つのポイントについて注意しなければなりません。
ここではこのうちの特に①取得について具体例も含めてみてきました。
事業者が個人番号の提供を求めて個人番号の取得をする際には、個人番号の利用目的を通知する必要があるので、その手段についても合わせて把握しておきましょう。