事業者による個人番号の提供の要求 提供時の注意点や提供の範囲

個人番号の提供を要求できる場合

個人番号関係事務を処理するために必要があるとき、事業者は他者に対して個人番号の提供を求めることができます

(番号法14①)(個人番号利用事務の委託を受けた事業者の場合、個人番号利用事務を処理するため必要があるときにも要求ができます。)

提供を要求できる場合例

  • 源泉徴収票や健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届等の作成事務のために従業員から個人番号を取得する場合
  • 講演料・地代等の支払調書作成のため支払先である個人から個人番号を取得する場合

本人以外に対して提供を要求できる例

  • 給与の源泉徴収事務のため、従業員の扶養親族の個人番号を記載した扶養控除等申告舌の提出を従業員に求める場合

 

勤務形態による提供の要求の可否

源泉徴収票等の税務関連書類や社会保障関連書類に個人番号を記載することが必要となるため、事業者は正社員、契約社員、派遣社員、パートタイム労働者、アルバイトについては、個人番号の提供を求めることができます。

それが短期のアルバイトであっても、源泉徴収票を作成する関係上、個人番号の提供を受ける必要があります。

 

派遣社員については、派遣元と雇用契約があり、派遣元が源泉徴収票の作成や社会保険関係の手続を行うため、派遣先の会社が派遣社員に個人番号の提供を求めることはできないと考えられます。

 

個人番号の提供を拒まれた場合

税や社会保障に関する書類に個人番号を記載することは、法令で定められた事業者の義務です。

個人番号の提供を拒まれた場合はこのことを周知し、再度提供を求めることが考えられます。

それでもなお提供が受けられない場合、書類の提出先である行政機関等の指示に従うことが適切でしょう。

国税庁ホームページでは、「国税分野におけるFAQ」の中でどうしても提供を受けられない場合の措置として、提供を求めた経過を記録・保存するなどして単なる義務違反ではないことを明確にするよう求めています(同FAQ2-10、下記参照)。


Q2-10従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。

(答)

法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで耆類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。

それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。

経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。

なお、法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできませんので、個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。

 

将来必要になる個人番号の事前取得

事業者は個人番号関係事務が発生した時点で個人番号の提供を求める事が原則となっています。

しかし、本人との法律関係等に基づいて個人番号関係事務の発生が予想される場合には、それが予想できた時点で提供を求めることが可能です。

従業員の給与の源泉徴収事務(源泉徴収票の作成)、健康保険・厚生年金保険届出事務(被保険者資格取得届の作成)は、雇用契約締結の時点で予想されるため、入社の時点で個人番号の提供を求めても問題ないと言えるでしょう。

 

他者に個人番号を提供できる場合

個人番号を保有する者が他者に個人番号を提供することができるのは、番号法第19条に挙げられている場合のみで、それ以外で提供することは禁止されています。

事業者については、個人番号関係事務を行う者として事務を行うために必要な限度で、保有する個人番号を他者に提供することが認められています(番号法19三)。

従業員の個人番号が記載された給与所得の源泉徴収票2通を作成し、1通を税務署長に提出し、もう1通をその従業員に交付するといったことは、個人番号関係事務として認められます。

 

従業員持株会への個人番号の提供

従業員持株会から配当に関する支払調書を発行する場合、持株会の会員はその会社の従業員だけですが、従業員から収集した個人番号を持株会に提供することは出来ません。

根拠となるのは番号法第19条第2号です。

個人番号関係事務を行う者は、その事務の処理に必要な限度で、保有する個人番号を他者に提供できるものとされています。

ここでいう「提供」とは、会社などの法人が個人番号を扱う場合、個人番号を法人の枠の外側の個人・団体に渡すことをいいます。

従業員持株会は会社の従業員によって構成されていても、法律上は会社と別の組織・団体であると考えられます。

そのため、会社が持株会に個人番号を渡すことは、番号法第19条第2号の「提供」にあたるのです。

ここでのケースのように持株会が配当に関する支払調書を作成することは、持株会の事務であり、会社の個人番号関係事務の処理のため提供の必要があるとはいえないので、会社は持株会に個人番号を提供することはできません。

 

持株会が個人番号関係事務を会社に委託することは可能で、その場合は委託に関する番号法の規定を守る必要があります。(「7個人番号関係事務を委託する場合」59頁以下参照)。

 

 

社内での個人番号の利用

会社の経理部が源泉徴収票作成のために保管している個人番号を、従業員の業績管理のための番号として総務部に渡すことは、会社内での個人番号の移動であり、番号法第19条の「提供」にあたらないので許されると考えてよいのでしょうか。

番号法第19条の個人番号の「提供」とは、会社などの法人が個人番号を扱う場合、個人番号を法人の枠の外側の個人・団体に渡すことをいうので、社内の経理部から総務部に個人番号を渡すことは「提供」にはあたりません。

ただし、従業員の業績管理のために個人番号を使用すること番号法で認められた事務の範囲外であるため、目的外利用となり、個人番号を総務部に渡すことは認められません

利用目的として定めた社会保険関係の手続のため、経理部が保管している個人番号を総務部に渡すこと等は「提供」にも目的外利用にもあたらないので可能です。

 

 

まとめ

事業者による個人番号の提供の要求についてみてきました。

どのような場合に個人番号が要求できるのか、その利用範囲をよく理解したうえ取得利用を行いましょう。

また、個人番号の提供については、提供の範囲だけではなく、番号法で定められた利用目的についてを合せて考える事を忘れずに確認していきましょう。

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